数年振りに春が来た
数年振りに春が来た。
春という季節自体は、去年も一昨年も変わらずに巡ってきていたのだが、こんなに「春」という季節の雰囲気を味わえるのは、数年振りだ。
ぽかぽか陽気がとても心地が良い。
かつての中国では、宇宙のあらゆるものを陰と陽の二つに分類できると考えられており、光に満ちた明るい澄んだ気を、「陽の気」と呼んでいたらしい。
「光に満ちた明るい澄んだ気」とは、なんとも上手い表現だなあと感じる。
浪人時代は、今日みたいな麗らかな日和でも、窓の外を眺めるだけでお終いだった。
特に、二浪目は、「自然にはいつも通り春がやってきているのに、いつになったら自分には春がやって来るのだろう」と、洗濯物を干しながら、ベランダから景色を眺めていたのを鮮明に覚えている。
終わりが見えず、どこか自分は違う並行世界を生きている気分だった。
それまで、当たり前に巡ってきていた春が、随分と遠いところにある気がしたものだ。
こんなにいい天気なら、外にも出掛けたくなるが、こうして春を迎えられるだけでも今は充分だと感じられる。
二浪してみて、普通の文化的な生活は意外に貴重なものだと感じるようになった。
読書に耽るには、ぴったりな日和。
そよ風を感じながら窓際で読書する瞬間が一番幸せだと感じる。
中学生の時からこの時間が大好きだった。
今日は詩集を読もうと思う。
(最果タヒさんという好きな詩人の作品。以前サイン本を書店で見かけて衝動買いしてしまった。)
そよ風で揺れたカーテンの合間から、鳥の囀りと春の陽気が流れ込んでくる。
皆さんも良き一日を。